さくらくも

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 僕は本を閉じた。そして顔を上げるといつのまにか目の前に幼馴染が座っていた。彼女はいつも通りの能面で同じ歌ばかりをえらく熟読していたねと言った。そういえば昨日の彼女は、幼馴染にしては少し笑顔が多すぎた。空は真っ赤であった。僕は、そろそろ帰るかと呟いた。幼馴染は小さく頷いて、鞄に荷物をつめるとのつそつと立ち上がった。僕は春の思い出をゆっくりと本棚に仕舞った。
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