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あらすじ
目覚めるとそこは階段の踊り場だった。
いつものようにボディチェックをして、まずは日時と名前を確認する。
鈴木正太郎と書かれた警察手帳が出てきた。なるほど、今日の僕は刑事のようだ。
『僕』の本当の名前はもう忘れてしまった。気付いた時には他人の身体で他人の生活を送る日々だった。ただし17時間で『僕』は意識を失い、また違う身体で目覚めることの繰り返し。
規則性はひとつだけ―――必ずその日が誕生日ということ。
僕は殺人事件の現場に連れて行かれた。
吉田祐樹とその妻が殺されていた。
僕は吉田に見覚えがあった。以前『僕』が17時間を過ごした身体だ。
捜査では「恨みを買うような人間ではない」という証言が集まる。「ただし1年前に人が変わったような日があった」
『僕』が人格を務めた間にトラブルを起こしていた可能性に気付く。
だが思い出せないまま、意識を失ってしまう。
僕はまた階段で目を覚ました。
翌日の僕は、新島というパチンコ店員だった。手に妙な怪我をしている。
僕は昨日の事件が気がかりだったが、新島の一日をそつなくこなした。
新島の自宅に帰った僕は、血の付いた包丁を発見し手に取る。
僕は鏡で新島の顔を初めて見た。1年前『僕』が付けた大きな傷があった。
僕は思い出した。
去年、飲み屋で居合わせた『僕』吉田と新島は、誕生日が一日違いということで意気投合した。
その時の僕は知らなかった、吉田が悪酔いする体質だということを。新島が俳優志望だということを。
迷った挙句、新島として自首したところで、僕は意識を失った。
20年が経過した。
新島の死刑執行のニュースが流れている。
僕は階段で目を覚ました。今日の『僕』は名前の分かるものを持っていなかった。代わりに地図がポケットに入っていて「誕生日おめでとう自分」と書かれている。
記された場所を掘ると血の付いた手袋と衣類が出てきた。
「殺したのは僕だ」というメモと共に。
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