幼馴染

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「はぁ……」  ブリキ製のロッカーと溢れんばかりの荷物が積み重なった部室に二人。置いただけの机にどっかりと寝そべる拓也は深いため息を吐いた。 「あのな、拓也。邪魔だし、ただでさえ暑い部室が更に暑くなるし、こっちまでテンションが下がる」  聡はぐだぐだ、うだうだしている拓也を睨む。  あの入学式から数ヶ月。季節は夏、場所は我らが部室。  桜が咲いて綺麗だった通りは全て花が散り、青々とした緑の葉が出ている。ミンミンと蝉の音が聞こえて、更に暑さを増すばかり。 「暑いのは分かる。こんなに暑いのにクーラーぶっ壊した誰かさん?」  拓也は机に寝転がったままだった。 「俺の家は少し遠いからなぁ、クーラーはついているがそこまで行くのにお前」  読んでいる漫画本の隙間からちらりと拓也の顔が見える。 「………………」  沈黙。ただ沈黙。 「俺、もう帰るわ」  そう呟いた時ようやく拓也は顔を上げた。 「まって、まって、ごめんって!」 「俺もお前のアイスベチョったのは悪かったと思ってる。だけど、こんな男だけのむさい部屋でそう、うだうだされたら暑さ倍増するわ! 帰る!」  ここに来る前、ゆっくりと歩いていた拓也を見つけ、聡がいつもの仕返しとばかりに驚かしたのはついさっきのことだ。  拓也がその時ゆっくり歩いていたのはコンビニで買ったアイスを食べていたからで、案の定アイスは宙を一回転して地面に落ちた。そして、楽しみにしていたアイスを食べられなかった拓也はむくれ、聡は仕方なしにここまで来ていたのだ。 「あぁ……、俺のバニラアイス……」 「買ってくるよ! さっきから言っているだろ!」 「あれは高いやつなの! 高校生とかが学校帰りに買う、かき氷のやつとは違う!」  拓也はむくれたまま、 「こんなちっさいのに一個百円するやつなの! 日本では群馬でしか作ってないやつ!」  拓也は大人でも『特別な時』にしか食べないようなアイスを校内で食べていたらしい。 「俺のバニラァ……」 「なんでそんなのを校内で食べてたんだよ」  聡が呆れた様子で聞くと拓也は表情を一瞬で緩ませピースサインを掲げた。 「メールで彼女からご飯のお誘い!」  やっぱ帰ろう、聡は置いていたバックに手をかけた。
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