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「おぉ……どうも」
聡はそれを受け取る。確かにコーラだった。少し衝撃がかかっていい感じに振られていたが、これは後で言い訳できるだろう。押し付けた拓也が悪いのだから。
じゃあ、これで。
そう言い手を振る楓を聡は少し考え引き止めた。
「良かったら、俺達と話さないか。俺達も授業無いし……女の子を一人で居させるのも可哀想だし」
あの友達が授業に出ている限り、楓はしばらく一人で居ることになる。それはそれでいいが、幼馴染の身に置いて心配だった。
それを感じ取ったのかは分からないが楓は、
「じゃあ、お邪魔しちゃおうかな。図書館に行くのもいいけど、聡兄とも久しぶりに話したいし」
「あぁ、拓也も喜ぶよ。最近、野郎とばかり話していたから『女の子と話したい!』てさ。昨日も部室でうるさかったんだぞ?」
なにそれ、と楓は笑った。
パッと花が咲くような綺麗な笑い方は昔から変わらない。そんな笑顔を見ながら、気づくと自分も笑顔になっている。
「楓ちゃーん! 久しぶり! ささっ、ここにどーぞ。聡はどいてね」
拓也の元に着いた時、楓を優しくエスコートしつつ、俺を追い払った拓也。
楓は拓也に指定された場所に座ったが、緊張で固まっているのが分かる。俺はさりげなく、楓の方に席を動かし座る。楓の表情は少し柔らかくなっていた。
拓也に目を配ると拓也は俺の一連の動作を見て、怪しく笑っていた。どうやら計算だったらしい。まんまと嵌ってしまった自分の単純さに腹を立てながら、拓也に目で合図する。拓也は無言で返事をする。答えはイエス。
分かっているよ。余計なことは言わない。
拓也の返事はいつも同じ。
「楓ちゃんはさ……」
拓也は楓と話し、楓は拓也の話を聞いている。俺は適当に相槌を打ちながら二人の会話に加わっていた。拓也は昔から人と話すのが得意だ。おしゃべりというほどでもないが、人の意見を聞いて、話すのが上手い。どこかで、聞き上手は話し上手、と聞いたことがあるが拓也はまさしくそのタイプだ。
その点俺は、話すことがあまり得意ではない。
意見を求められたら答えるほどの会話術はあるが、自分から話そうとは思わない。だからと言って、人と話すことが嫌いなのではない。ただ得意ではないのだ。
「だろー? 俺もそう思ったんだよ」
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