幼馴染

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 そう、さっきの拓也との目の会話は、俺を後押しするための拓也の作戦。拓也が言うに『俺が会話を盛り上げるから、お前は後から入ってこい』ということらしいのだが、正直勘弁してほしい。お前は俺のおかんか。もしくは野次馬か。  そしてその結論は後者で決まりだ。 「それにしたって脈のなさは異常事態だよ。普通慌てるし、『いや、そ、そんなことないってぇ!』と言うところだろ。意識していたら」 「それ、楓の真似か?」 「悪いかよ」  拓也は口をとんがらせた。 「演技でもないんだよな?」 「あぁ、あいつの演技力のなさは学祭の時で分かってる。あいつ、演劇部だったくせに演技力は全くと言っていい程なくって、ほぼ道具係。最後の学祭で出たけど、『あのっ!』って声かけるシーンをまさかの噛みやがった」  なんて言ったんだっけ? 拓也は続きを催促する。 「『あにょ!』って……アホか……」  聡が頭を抱える中、拓也は吹き出すのをやっとの事で堪えた。
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