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「まあね、法人とは言っても、専従のスタッフは、こちらの山村さん一人だけで」先生の言葉に、理香は小さく頭を下げた。「あとは基本、ボランティアです。理香先生、写真、あります?」 「──先生?」 「前職が塾講師なんです、英語の」  大学の先生に「先生」と呼んでもらうような経歴ではない。理香は言い訳をするように言い、足もとに置いた書類ケースから、今日、研さんに渡すつもりで持参していた写真データのプリントアウトを取り出した。 「普段の活動です」  スミレ先生が隣から手を差し出し、長谷さんに回してくれる。  写真は、ボランティアが中高生たちに勉強を教えている風景だ。  会場は隣の大会議室で、スクール形式に並べた長机の思い思いの場所に中高生が座り、大学生を中心に、大人たちが手元をのぞき込むようにして、ほぼ一対一で教えている。うしろから撮影したもので、生徒たちの顔は見えない。  長谷さんは、写真を机の上に並べ、右手を軽くあごに当てて何か考え込んでいたかと思うと、おもむろに口を開いた。  会の事業計画から資金繰り、行政との関わりまで、プロジェクトの状況について細かく質問する。  丸岡先生は、活動資金や物品はほぼ寄付でまかなっていること、資金と人手が確保できれば開催場所を増やしたいと思っていること、区役所と教育委員会から後援を受けていることを説明した。 「で、パンフレットというのは──」
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