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「ちょっと話があるんだけど。いい?」
「何ですか?」
理香は、首をかしげてみせた。
ミーティングで顔を合わせることはあっても、研さんと二人で話すのは久しぶりだった。正直に言えば、研さんと二人きりになるのを避けていた部分もなかったとは言えない。
「研さん、髪、短くなりましたね」
理香は明るく言った。アフロの体裁を残しつつ、あのふわふわが短くなってすっきりしている。スミレ先生の影響なのかもしれない。
「オレのことはいいからさ。真面目な話」
研さんは、テーブルの上に載っている箱の中からチョコレートを二つつまみ、一つを理香に手渡した。今日持ってきてくれた差し入れだ。
「ありがとうございます」
受け取ってお礼を言った理香に、研さんは怒ったような困ったような顔をした。
「──外、いいか?」
言われて、理香は大人しく「はい」とうなずいた。何の話なのか予想はついている。逃げてしまいたいけれど、逃げるわけにもいかない。会話が盛り上がるテーブルの間を縫うようにして進み、研さんと二人、ドアの外に出た。
研さんのあとについて狭い階段を降りる。店の前の通りは、車がようやく通り抜けられるかどうかの幅しかない。その端っこに立ち、研さんは話を切り出した。
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