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   ***  気がついたら、駅への道を一人で歩いていた。  ちゃんとコートを着て、バッグを提げている。歓送会の会場をどうやって出てきたのか、よく覚えていない。少し考えて、ああそうだ、研さんが送り出してくれたんだ、と思い出した。 『わたし、行かないと』  うわの空でつぶやいた理香に、研さんは「待ってろ」と優しく言い、店に戻ってバッグとコートを持ってきてくれた。 『挨拶は終わったし、もう出番はないだろ? どうせ幹事は和希なんだから、あとは気にすんな。用ができて帰ったって言っとくから』 ──会いに行かなくちゃ。  それしか考えられなかった。 ──会って話をしなくちゃ。すぐに──。  駅に着いて、ちょうどホームに滑り込んできた電車に乗った。  電車の窓から外を見ると、流れていく雪の向こうに、うっすらと月がかすんで見えた。  理香はバッグからスマホを取り出した。画面に触れ、受信ボックスを開く。  そこには、何通ものメールが未読のまま残っていた。ずっと見ないふりをしていた、長谷さんからの連絡。大切な人の名前にそっと触れて、最後に受け取ったメールを開いた。
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