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 全然悪くないどころか、むしろ、こんなに急な話を引き受けてもらって申し訳ないばかりなのに、なぜか謝る長谷さんに恐縮してしまう。  長谷さんは「今見てきたんですが」と続けた。「参加者、こんなにたくさんいるんですね。生徒さんとボランティアの方と──五、六十人くらいですか?」 「そうですね、今日はそれくらいです」  来週から、ほとんどの中学校や高校で期末試験が始まる。だから、教える方も教わる方もいつもより若干多い感じではある。「日によって違いますけど」とつけ加えると、長谷さんがうなずいた。 「これを週二回ってすごいね、って大学生の子に言ったら、『今は期末前だから毎日やってる』と教えてくれました」  長谷さんは言って、「期末試験って何だか懐かしい響きだなあ」と目を細めた。  デザイナーという人種には、あまり縁がない。だから、唯一知っている研さんみたいに、みんなあくが強いのかと思っていたけれど、そういうわけではないらしい。長谷さんは、いかにも常識的で穏やかそうに見える。 「あなたは専属のスタッフでいらっしゃるんですよね。運営する側も大変ですね」  長谷さんが言った直後に、ドアがぱっと開いた。 「リカちゃん先生!」  元気な声とともに沙彩ちゃんが顔を見せた。  短くした制服のスカートから、すんなりした足が伸びている。沙彩ちゃんは、長谷さんを見るなり、きれいにメイクをした目を見開いて、「うわ、イケメンだ」とわざとらしく後ずさってみせた。
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