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色白の沙彩ちゃんに、夏服のブラウスとチェックのスカートがよく似合っている。長い髪は、三年生になってからずっとそうしているように、今日もきっちり束ねられていた。本人いわく「ダサいけど就職に備えての内申対策」らしい。
「えーと、あの、えっと、その」
突然のことに、しどろもどろになってしまう。その様子を見て、野中さんが「ぷっ」と笑った。
「駅で、すごくかっこいい人と一緒にいるのを見たって、ミキちゃんが。ねー?」
同意を求められて、ミキちゃんはこくこくとうなずいた。野中さんの言葉どおり、ミキちゃんは、この数か月ですっかり学習会に馴染んでいた。そして、全然タイプが違うのに、なぜか沙彩ちゃんになついている。
「どんな人だったか詳しく聞いたら、どう考えても長谷さんじゃん。リカちゃん先生と仲良くくっついてたっていうんだもん」
「くっついたりしてない!」
理香は、あわてて否定した。せいぜい「ちょっと距離が近かった」程度のはずだ。
「結婚すんの?」
「いや、まだ、そこまでは──」
言いかけてはっと気づいたら、沙彩ちゃんが笑っていた。
「ほら、やっぱり付き合ってた」得意気に言って、「ね?」としたり顔でミキちゃんにうなずいてみせる。
「リカちゃん先生って、隠しごとできないよね。それにしても、あー、いいなー、イケメンの彼氏」
──確かに、隠しごとは苦手なのかも。
冬の間にあったことも含めて、何もかも全部、周囲にバレバレだったらどうしようと思うと、ものすごく恥ずかしくなってきた。
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