3/21
前へ
/233ページ
次へ
 色白の沙彩ちゃんに、夏服のブラウスとチェックのスカートがよく似合っている。長い髪は、三年生になってからずっとそうしているように、今日もきっちり束ねられていた。本人いわく「ダサいけど就職に備えての内申対策」らしい。 「えーと、あの、えっと、その」  突然のことに、しどろもどろになってしまう。その様子を見て、野中さんが「ぷっ」と笑った。 「駅で、すごくかっこいい人と一緒にいるのを見たって、ミキちゃんが。ねー?」  同意を求められて、ミキちゃんはこくこくとうなずいた。野中さんの言葉どおり、ミキちゃんは、この数か月ですっかり学習会に馴染んでいた。そして、全然タイプが違うのに、なぜか沙彩ちゃんになついている。 「どんな人だったか詳しく聞いたら、どう考えても長谷さんじゃん。リカちゃん先生と仲良くくっついてたっていうんだもん」 「くっついたりしてない!」  理香は、あわてて否定した。せいぜい「ちょっと距離が近かった」程度のはずだ。 「結婚すんの?」 「いや、まだ、そこまでは──」  言いかけてはっと気づいたら、沙彩ちゃんが笑っていた。 「ほら、やっぱり付き合ってた」得意気に言って、「ね?」としたり顔でミキちゃんにうなずいてみせる。 「リカちゃん先生って、隠しごとできないよね。それにしても、あー、いいなー、イケメンの彼氏」 ──確かに、隠しごとは苦手なのかも。  冬の間にあったことも含めて、何もかも全部、周囲にバレバレだったらどうしようと思うと、ものすごく恥ずかしくなってきた。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2979人が本棚に入れています
本棚に追加