■ scene 2

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■ scene 2

──なんか、くたびれたかも。  コンコースに向かって歩きながら考える。事務所を出た時はそうでもなかったはずなのに、”どっと疲れた”というのは、こういう状態を言うのかもしれない。  きっと、電車の中で交わした会話のせいだ。あの会話が神経を蝕んでいるに違いない。  “めろめろ”の件は別として、合コンに連れ去られそうになる長谷さん、それに、“嫁”──。考えただけで、くらくらしてくる。取りあえず、忘れておくのが一番かもしれない。  駅前に出たところで、理香は周囲を見回し、長谷さんの姿を探した。いつもは先に来て待ってくれていることが多くて申し訳なく思っていたけれど、今日は理香の方が早く着いたようだ。  バッグからスマホを取り出して時刻を確認すると、待ち合わせの時間まで、まだ少しあった。  駅ビルの壁に背を向けて立ち、行きかう人の足元を眺める。  日が落ちて、ようやく少し涼しくなってきた。八月が終われば、次の季節がやってくる。かすかな風の中に、ぎらぎらするような夏の熱さとは違う、秋の気配が少しだけ含まれているような気がする。 『涼しくなったら、旅行に行こうか』  長谷さんの声を思い出したら、だんだん幸せな気分になってきた。  来てくれると分かっている人を待つのは、とても楽しい。思わずにこにこしてしまいそうになり、理香は、頬に手を当てて自分を落ち着かせた。  その時、手の中に握りしめていたスマホが震えた。見ると、長谷さんの名前が表示されている。
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