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デスクの数からすると、少なくとも、六、七人はスタッフがいるに違いない。
──長谷さんの嘘つき。
理香は、心の中で文句を言った。「個人の事務所だ」なんていうから、長谷さんと、あと一人くらいの事務室を想像していた。思っていたのと全然違う。
真山さんが、グラスを二つ、お盆に載せて戻って来た。もしかして、この人と一緒にここでお茶をすることになるんだろうかと思うと、ますます気後れしてしまう。
グラスをテーブルの上に置きながら、真山さんが苦笑いした。
「そんなに小さくならないで。くつろいでもらって大丈夫ですよ」
「いえ、すみません、本当に。図々しく来てしまって」
恐縮して言うと、真山さんは理香と目を合わせ、それから微笑んだ。
「あなたを選んだ訳が分かる気がする」
きょとんとしている理香に向かって、真山さんは続けた。
「もうね、長谷さん、山村さんのことを紹介して回りたくて仕方がないのよ」
「え?」
「打ち合わせが長引いてるのは本当だけど、いい機会だと思ったんじゃないかな。わざわざ、『理香の相手してて』って言うくらいだから」
目を見開いた理香に向かって、真山さんがにこにこしている。つんとした人なのかと勝手に思っていたら、全然そんなことはないらしい。
真山さんは、理香の向かいに腰を下ろした。
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