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長谷さんが一途な人なのは十分知っている。理香を深く想ってくれていることも。
誰がどんな風に長谷さんに近づいたとしても、彼の気持ちが揺らぐことはないと思う。
それでも、他の女性にそういう目で見られているというのは、心穏やかではない。
「あの、実は、さっきも電車の中で小川さんに聞いて──。あ、小川さんって分かりますか?」
「分かる、分かる。やたら“親睦会”が多いのよね、あの会社。長谷さんは、『古巣だから、気を遣ってくれてるんじゃないか』って言ってたけど」
やっぱり長谷さんは気がついていなかったらしい。
「──懇親会じゃなくて、合コンらしいです。社員の方に頼まれるんだって」
理香の言葉に、真山さんは「やっぱり」とうなずいた。それから、微笑みまじりの目で理香を見た。
「指輪、早くつけさせてあげたら? 二人とも、そのつもりはあるんでしょ?」
正面から聞かれて、とまどいながらも理香は素直にうなずいた。
「──はい」
真山さんが表情を緩めた。
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