■ scene 3

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「どこに行こうか」 「──この間のとこがいいな」  長谷さんが以前から頻繁に通っている店だ。最近、何度か続けて二人で行った。ご夫婦だけでやっている路地裏の小さな店。木のカウンターがあって、並んで座ると、とても居心地がいい。  この時間なら予約なしでも大丈夫だろう。 「じゃあ、あそこにしようか」 「うん。豆のサラダ、食べたいです」  ちょっと甘えて言ってみる。 「理香、豆好きだよね」  僕はよく転がすけどね、と笑うけれど、そんな場面は一度しか見たことがない。長谷さんは指先が器用で、とてもきれいにお箸を使う。 「今の季節なら、枝豆が入ってるかなあ」 「ああ、入ってたら、緑がきれいそうだね」  じゃれるように言葉を交わしながら歩き、横断歩道を渡って駅前に出た。かすかに風が吹いている。 「少し涼しくなってきたかな」 「日中、すごく暑かったですもんね」 「そうだね。まあ、ひと月もすれば本格的に涼しくなるかな」    秋になったら遠出をしようよ──。そんな話をしながら、コンコースの前の広場を横切る。その先の細い路地に足を踏み入れた。
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