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朝も昼も夜も、一緒にいたい。この人と。
自分の心臓の音が聞こえそうだ。長谷さんは、何も言わない。どきどきしながら見上げると、きれいな目が理香を見つめていた。
長い指がすっと頬に触れ、優しく輪郭をなぞる。もう片方の手が肩に触れた。ふわっと引き寄せられたかと思うと、次の瞬間、長谷さんの腕の中にいた。
背中に回された手が、そっと理香を抱きしめる。
「ダメなわけない」理香の耳元で、長谷さんの声がささやいた。「今日でも、明日でもいい」
長谷さんが髪に口づけた。額に、まぶたに、唇が触れる。思わず顔を上げると、至近距離で目が合った。
長谷さんは理香の顔をのぞき込み、もう一度、指先で頬に触れた。目を伏せた理香の頬を、片方の手のひらで柔らかく包んで、上向かせる。
「早く、僕のところに来て──」
キスが落ちてきた。
「理香」
名前を呼んでは、キスを繰り返す。理香は、長谷さんのシャツを握りしめた。触れられたところから、心地のよいしびれが広がっていく。足下がふらついて身体に力が入らない。
「貴文さん──」
返事の代わりに、またキスが落ちてくる。何も考えられなくなってしまいそうだ。完全に溺れてしまう前に、理香はどうにか口にした。
「待って──」
「何で?」
「──ここ、家じゃありません」
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