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「せっかく『早くしたい』って言ってくれてるんだから、少しでも早い方がいいかなって。また、あれこれぐだぐだ言い出して──じゃなかった、うっかりタイミングを逃しちゃったりしたら、えーと、ほら、のびのびになっちゃうしね」
長谷さんにしては失言だらけで笑ってしまった。
「そこで笑わないように」
長谷さんが、自分も笑いながら言う。
「だって──」
理香は、笑いながら目元をぬぐった。大丈夫だ。きっと、何もかも全部、大丈夫。
「だってじゃないよ」
「待たせてすみませんでした。心配しないでください。ちゃんと電話して、話をしますから」
宣言した途端、まるで見計らったかのように、バッグの中でスマホが震え出した。
妙な予感がして、おそるおそるバッグの中から取り出し、長谷さんと一緒に画面をのぞき込む。そこには、何か月ぶりかの名前が表示されていた。
二人して顔を見合わせた。
「──すごいタイミングですね」
「今、話せってことだね」
理香はうなずき、軽く呼吸を整えてから、「応答」の表示に触れた。
episode 1
― 終 ―
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