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ふわふわした乳白色の夢を見ていた。柔らかくて、まるでマシュマロか何かみたいに甘い匂いがしそうな夢。
何かにふんわりと包まれているような、逆に、何かを柔らかく抱きしめているような──温かくて心地のよい、白っぽい眠りの世界をたゆたう。
その世界がふいに揺らいで、すうっと呼び覚まされた。
理香は、まだ夢の中にいるような気分で、横になったまま、ぼんやりと天井を見上げた。白いクロスにブラインドの影が映っている。窓に目を移すと、隙間から見える空が黒から青へと変わり始めていた。
──明け方──かな?
何かが変な気がした。というより、何かが足りない。
ほわんとした頭のまま考える。取りあえず、優しい腕の中にもぐりこもうとしたところで、いつも感じている腕の重さがないのだということに気がついた。
代わりに、いつもは二人でくるまって眠っているダブルサイズの毛布が理香の方に寄せられ、パジャマを着た肩を包み込むように、きっちりとかけられている。
──貴文さん?
理香はゆっくりと起き上がった。
結婚して一年経った今も、相変わらず、彼は理香を抱きしめて眠る。さすがにもう、夜中に逃げ出すかもしれないなんて思ってはいないだろうから、抱き枕にされているだけかもしれないけれど、彼の腕の中で眠るのが当たり前になっていた。
その彼の姿が見当たらない。ベッドの上、普段、彼が眠っている側に手を触れてみると、わずかな温もりだけが残っていた。もしかしたら、ベッドを出てからしばらく経つのかもしれない。
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