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額のあたりに温もりを感じて顔を上げると、そっと唇が合わさった。
触れるだけの優しい口づけ。愛情と、理香をいたわってくれる気持ちが伝わってくる。
それが嬉しくて、それに、こんなふうにくっついているのが気持ちよくて、もっともっと触れ合いたくなる。
「──もっと──」
甘えるように言い、顔を寄せると、また一つキスが落ちてきた。舌先で応えた瞬間、キスが一気に熱を帯びた。
「ん──」
思わず息がもれる。彼のパジャマの胸元を握りしめると、肩に回された腕に力がこもった。二人してキスに溺れた。
やがて、貴文さんは、理香と額を合わせ、困ったように笑った。理香の唇を親指でなぞる。
「ああ、もう。そんなつもりは全然なかったのに。だめだよ、煽ったら。大事な身体でしょう?」
「──煽ってますか?」
「煽ってるよ。自分でも分かってるくせに」
まあ、分かっていないこともない。別にそういうことがしたいわけじゃない。ただ、心も身体も深く触れ合っていたい。
「だって──」
「大事な時期に無理をさせたくないし、一応、しばらくは我慢しようと思ってるんだから、煽らないで。お願い」
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