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 長谷さんは、眉根を寄せて考え込んでいる。もともとお茶目なところがある丸岡先生は、その反応に満足したらしく、いたずらっぽく笑った。 「ほかにもね、大学生が三十人ほど参加しています」  学生ボランティアの代表として、この会議に出席している和希ちゃんが、丸岡先生の隣で小さく頭を下げた。長谷さんが会釈を返す。 「で、何をしているかというとね。要は、中高生の学習支援です。よりよい形で社会に出ていけるように、確実に卒業できるようにケアすることと、大学に行きたい子に対しては受験勉強のサポート。家庭の事情で、塾に行けない子もたくさんいますから」  丸岡先生は言って、最後につけ加えた。 「AFFってね、”Act for our future(未来のために行動する)”の略なんです」 「──ああ、なるほど」  長谷さんが腑に落ちた顔になった。  もともとは、丸岡先生のゼミに所属する大学生を中心に、この区民センターで、経済的な事情を抱える中高生のための無料学習会を行っていた。  理香が、以前の仕事をきっかけにこのプロジェクトを知ったのも、そのころだ。  当時は「やれる人が、やれることをやる」というスタイルで、来られる人が来て勉強を教え、余力があるメンバーが片手間に連絡係や会計係を請け負っていた。でも、参加する中高生が増えるにつれて雑用も多くなり、事務が回らなくなった。  そこで、専従のスタッフ、要は理香を雇用して、特定非営利活動法人の認証を受けることになった。今年の春のことだ。
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