間奏 ~Ⅰ~

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「何がおかしい。」 「ううん、可笑しいんじゃなくって、 2人とも良い友達だなって思って。」 「別に、友達じゃない。」 「だ、そうだよ。」 「ふふ、照れちゃって。」 ふくれっ面の昌孝くんと呆れた様子の真守。 本当にいいコンビだ。 それにここはとても心地よく、 まるで陽だまりにいるかのように あたたかった。 その日を境に、自然と、 あたし達3人はよく一緒にいる様になった。 遊びに行ったり、ご飯に行ったり、 一緒に勉強をしたり、そんなある日。 ポツリと昌孝くんが呟いた。 「…こいつらはきっと、 ピアノ弾きの俺じゃなくって、 一高校生としての俺を見ている。 だから、楽なんだろう、な。」 何気ない小さな独り言だったんだろう。 実際、真守には聞こえなかったらしいし、 あたしだって昌孝くんの声を 意識していたから聞こえただけだった。 知らないふりをして 教科書の文字を頭の中で読み上げるけど、 その時の昌孝くんの真剣な顔が、 今まで見た何よりも輝いていて、 ーーあぁ、好きだな って、はっきりと自覚したんだ。 * 履き慣れたローファーに足を埋めて、 ロック付きのドアを開けた。 「行ってきます。」 玄関横にいる寮長先生のスーツが、 新学年の始まりを改めて実感させる。 ーー今年も、 昌孝くんと同じクラスになれますように。
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