Scene;1

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「!!!」 "笠鷺 昌孝"は、 さっき目が合ったのと同じように、 否、まるで、ずっと答えの見つからなかった 宿題の問題を解けた子供のように、 驚いてから、嬉しそうに微笑んだのだ。 「へぇ…その漢字でも、そう読めるのか。 ……良い、名前だな。」 無愛想な顔しか知らなかったあたしには、 雷が落ちてきたかのような衝撃を受けた。 笠鷺は美しい。 ミカで無くても、 まるで遠い次元の存在だと思うくらいに。 だからこそ、 への字に曲がった口唇が緩やかに弧を描いたこの時に、 初めて人間だと感じたんだ。 ただ、それだけ。 「…ありがとう。 改めて、吉岡 実よ。」 「……笠鷺 昌孝だ。」 「よろしく、笠鷺くん。」 ふいと顔を背けられたものの、 自己紹介に応えてくれたのは事実で、 早急にミカを戻す必要があったのだけど、既にショートして、手の付くしようがなかった。 そんな日。1年生の入学式の日。 あたし達は、出会い、そして、 最高の親友となる1歩を歩み始めたのだった。
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