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日本に来て百二十年あまり、その間、結婚する度に名字を替え、美里になったのは十八年前。
つまり、俺の母親と結婚した。
以前の親父は、傍若無人で女性が物に感じるようになっていたが、俺の母親の純粋な愛情に触れて、相手に対する思いやりを学んだようだ。
話は変わるが、美和の家系は、百年前に親父が産ませた女性から繋がっている。
暴れん坊の暴れん棒は、ヴァンパイアの種を撒き散らしていたらしい。
話は逸れたけど、俺が言いたいのは、親父みたいにはなりたくないのが、今の気持ちになる。
昔の悪事を悔やんで、今はボランティア活動に熱心だったり、寄付をしたりしているけど、それで罪がプラマイ0なんてあり得ない。
俺が考え事をしていると、親父が話しかけて来た。
「学校の方はどうだ?」
なんてオーソドックスな、捻りのない問いかけだろう。
もっとも、他に聞く事がないか……。
ああ、言い忘れたけど、親父は金髪で目が青い。
美和が色白で美人なのも、上手い具合に混ざっているからだと思う。ああ、俺もそうか。
「学校は、普通かな? なるべく目立たないようにしている」
親父は、なぜそうしているのか知っているので、黙っていた。
し~ん
会話が途切れる。
やがて、沈黙に耐えきれなくなったのか? 親父が口を開いた。
「戻って来るか?」
「やめとくよ」
ここは即答する。
そもそも、俺が家を出た理由は香織の存在だった。
ヴァンパイアは夜になると情欲が強くなる。
血が吸いたくてしょうがなくなる。それを抑える事に自信が無くなった俺は、家を出た。
香織を守るために……。
香織に嫌われないように……。
なのに、香織は毎朝会いに来る。
お前は、なぜ会いに来るんだ?
俺の事が好きなのか?
幸せそうな笑顔を見せるのは、友達としてか?
それとも……。
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