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満月の下、商店街の辺りまで来ると、静寂を破る怒声が聴こえて来た。
そして、女性の悲鳴がサイレンのように響く。
「助けてーっ!」
こりゃ大変だ。声を頼りにその場へ急ぐ。
すると、五人の不良に囲まれる香織を見た。
さらに、香織が不良の一人に平手打ちされ、地面に倒れる瞬間も目撃した。
俺の中で、何かが爆発する。
それからは、ほんの瞬き一、二回の間だった。
不良たちの間を駆け抜けると、手刀で気絶させた。
これでも、俺の怒りは治まらない。不良の一人を引き起こし、血を吸うことにする。
あまり美味そうではないが仕方がない。
俺が、相手の喉に犬歯を突き立てようとした瞬間、目の端に香織が映った。
香織、お前は、なんで俺の心を揺らす。
香織、なぜ、何時までも忘れられない。いっそ、香織の血を吸いたい。甘美な香りがするお前の血を、残らず吸いたい。お前の全てを奪いたい……。
だが、香織は泣いていた。
その涙が、見失いかけていた心を取り戻させてくれた。
会話を交わした後、俺は香織を抱き上げた。
その途端、香織は安心して寝てしまう。
「優希……」
香織の寝言を聞いた途端、俺は何もせずに歩き出した。
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