7人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「あ~あ、やっぱり眠れない」
私は、思わず口に出してしまった。
優希の所でも行くか。満月だから、彼も眠れないに違いない。
私は、パジャマから普段着へ着替える。。軽く鏡をチェックすると、犬歯が異様に伸びている。
「ウ~ン」
とりあえず野菜ジュースを飲んでみる。セロリが好きだから、トマトジュースよりこっちなのよね。
私は、べスパのエンジンを掛けると、屋敷の門扉を開けて街に出る。
夜風が心地よいし、エンジン音も快調だった。
「助けてーっ!」
そんな時、どこからか悲鳴が聞こえた。
私は、声の方へと駆けつける。声に聞き覚えがあったから放っておけない。
思った通り声の主は、クラスメートの香織だった。彼女は五人の不良に囲まれていたが、心配はない。何故なら、既に優希が駆けつけていた。
優希は、あっと言う間に五人を眠らせると、香織をお姫様抱っこで運んだ。
何だか、凄く羨ましい。
私は優希の彼女なのに、一度もされた事がない。優希と香織の甘い雰囲気を見ていて、疑問が湧き上がって来た。
優希は、本当は香織が好きで、私と付き合っているのは同族のヴァンパイアだからなのかも知れない。
ヴァンパイア同士なら血を吸い合う事が可能だが、人間が血を吸われると色々な悪影響が出る。
「優希が本当に大切なのは、香織?」
そう思うと、涙が止まらなかった。
頭の中がモヤモヤしたまま、べスパを飛ばして家へ帰る。
優希。
香織。
私には、どちらも大切な人だから、仲違いはしたくない。
でも、優希には私だけを愛して欲しかった。
今まで、優希と香織は仲の良い幼なじみだと思って来たし、実際もそうだった。
だけど、優希の心が香織にあるとすれば、私は何が貰えるのだろう?
考えれば考えるほど、自分が惨めに思えて来た。
私は、優希の何なのだろう?
私は、優希に必要とされているんだろうか?
自問自答しても、答えは見つからなかった。
最初のコメントを投稿しよう!