優希の場合

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 朝の風は冷たい。手も頬もジンジンする。  アパートから1キロちょいで、聖エルモ学園に到着した。  相変わらず、高級外車が校内に入って行く。   ほとんどの生徒が寮生活だが、中には送迎してもらっている生徒もいる。  だから、朝夕には運転手付きのリムジンで渋滞したりする。  俺と香織はクラスも同じなので、仲良く2ーBの教室を目指す。その時、廊下で変なヤツと遭遇する。 「ヴァンパイアくん、おはよう」  俺に話しかけて来たのは、教授と言うあだ名の下級生、湯沢智史だった。  なぜ、彼が教授なのかと言うと、ドラキュラ退治で有名なヴァンヘルシング教授を敬愛して止まないからで、つまり、俺の天敵になりたいらしい。  湯沢は、【オカルト研究会】なる怪しげな部活を作って、本物のヴァンパイアを探していた。 「優希はヴァンパイアじゃないって言ってるでしょ」  香織が湯沢に抗議する。 「あまり強く言わなくていいよ。教授の見解が正しいから……」心の中で湯沢を擁護するが、香織の勢いは止まらない。 「だいたい、ヴァンパイアなんて存在するわけ無いでしょ。高校生にもなって、何を考えているの」  香織の猛攻に対して、湯沢はキッパリと答えた。
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