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俺は、美和と付き合っている。
美和は可愛いし、美人だし、性格も良い。
でも、心のどこかで香織の事も気になっていた。
香織は、なぜ俺の所に毎朝通って来るのだろうか? 俺の事を、どう思っているのだろう?
でも、人間とヴァンパイアでは、愛し合っても悲劇になるのは目に見えていた。どうすることもできない。
放課後、部活が休みだった香織は、俺の自転車の後ろに乗っていた。
川面に白い鳥が映っている。水面スレスレを滑空する白鷺だった。
白鷺と競争するように走ると、香織が耳元で囁く。
「綺麗な鳥だね」
なんだか、香織と恋人みたいな雰囲気で、変な気がする。悪くはないけどね。
俺の実家は、街から少し離れた郊外にあるのだが、そこは香織の家でもある。
不思議な話だが、理由は簡単な事で、香織の母親が俺の実家に住み込みで働いているからだった。
今日は二年ぶりに実家へ帰ることにする。まぁ、たまには帰らないと、親父の顔を忘れそうだしね。
俺がインターフォンを押すと、香織の母親が音声で対応する。
「どちら様でしょうか?」
「俺です、俺」
「お名前をお願いします」
やんわりとした口調だが、なかなかしっかりしている。おれおれ詐欺には引っ掛からないかも?
「香織のお母上、カメラで判っているんでしょ?」
彼女は、意外とお茶目な人だ。
「ごめんなさい。ところでお坊ちゃま、二人乗りは犯罪ですよ」
鉄製の門扉が開き、二人乗りの犯罪者は入れてもらえた。
俺の親父外食チェーン店のオーナーをしている。
香織の母親は、家政婦協会で頼んだ家政婦さんだった。あんまり出会いにドラマは無いけどね。現実的じゃない?
俺を生んだ母親は産後に体調を崩し、香織の母親、淑子さんに頼らざるをえなかった。
ところで、母親は人間だった。だから、俺ってハーフになる。
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