妙案

2/12
624人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
「西を拠点としたルシオ派とレンゼール派に異変が起こり、ルシオ派が内部分裂をしている。そうして離れた者がレンゼール派へと流れているという情報です。昨年起こった俺とファウスト様の拉致事件も、実はレンゼール派なのではないか。そうした話です」 「他にはないか」 「内部分裂の際にルシオ・フェルナンデスが行方を眩ませたという話も聞きました」  クラウルをあえて見る事はしない。彼の思いとカーライルの願いを口にする事はしないと決めた。例えこれでどんな責めを受けたとしても、口にしていい願いではないと判断したのだ。  だが、それはシウスも分かっていたようだ。鷹揚に頷き、クラウルへと視線を移した。 「西に人を送っておるな。どうじゃ」 「レンゼール派の動きも、ルシオ派の動きもない。それどころか、両方が西からいなくなってしまったような静けさがあるそうだ」 「人がいなくなったって、どういうこと?」  オスカルの嫌そうな問いに、クラウルは静かに瞳を閉じる。が、言葉はない。代わりに口を開いたのはファウストだった。 「拠点を西から移したか、息を潜めている。そうじゃなければ、拠点から大量の人を出しての総力戦だ」 「総力戦なんて冗談じゃないよ! 聖ユーミル祭で何しようってのあいつら!」 「ルシオ派は空中分解という可能性もあろう。首領のルシオがいなくなってしまっては、組織を保つ事は難しい」  そしてレンゼール派は王都に人を忍ばせ、時を待ち続けている。     
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!