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新たな脅威(シウス)
翌日、シウスは朝からクラウルの執務室を訪ねた。
首を傾げながらも招いたクラウルに様子の違いはない。あくまで白を切り通す、そういうことだ。
「クラウル、何か掴んだのではないのかえ?」
ソファーに腰を下ろして問う。それにもクラウルは涼しい顔だ。
「何の事だ?」
「お前、随分忙しく人を動かしておるようじゃ。事は大きな祭りの前、些細な事でも隠すべきではない」
それでも何も言わない。大きな溜息をつき、シウスは揺さぶりをかけた。
「昨夜、ランバートと少し話をした」
ほんの僅か、注視していなければ見逃すだろうほど僅かに肩が揺れた。ほんの数秒、手が止まった。効果があったと知るには十分だ。
「書庫でばったり出会っての。お前も好きな騎士物語を読んでおったよ、眠れぬと」
「あれか」
眉が僅かに下がる。穏やかな男の顔だ。
「ついでに世間話をな。そこで少し、気になる話を聞いた」
「なんだ?」
「奴の知り合いの娼婦がテロリストに利用されている疑いがあったそうな」
またほんの少し手が止まる。せっかく下がった眉が気難しく引き上がってしまった。
「会話の中で不審を感じ、知り合いを助け真偽を確かめにいったそうな」
「それで?」
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