選択の機械

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選択の機械

とあるIT企業の公開プレゼンテーションにて、CEOから新商品の紹介が始まった。 『人間はこれまで、数え切れないほどの選択を強いられてきた。 他国や他社との交渉に応じるか否か、 公務員になるか企業に勤めるか、 美人で聡明な女性と結婚するか キュートで家庭的な女性と結婚するか。まあこの二択は矛盾してはいないがね。 自分や他人の人生に大きく関わる重要な決定を下さねばならない場面がいくつもあった。 私たちはその選択全てに間違えずにいられただろうか?そしてこれから間違えずにいられるだろうか? ここに断言しよう。前者の答えはNOだが、後者はイエスだ。あなた方がこのアプリケーションを手にすればね。』 CEOは一息着いてから、また話し始めた。 『今から紹介するアプリゲーションは、人類を最適な選択肢に導くものだ。このアプリケーションを導入した端末に選択を与えれば、我が社最高峰のAIプログラムが、最善の行動を示してくれるだろう。』 CEOはポケットから携帯端末を取り出した。CEOの背後のスクリーンに携帯端末の画面が映し出されると、彼は端末下部のマイクに向かって話し始めた。 『今夜の晩御飯は何にするべきかな?』 2秒ほどで、スクリーンに文字が映し出された。 【今夜は社員と祝賀会に行き、好物の寿司を食べるのが良いでしょう。奥さんもお連れすれば完璧です。】 観客席からおぉーっとどよめきが上がった。 『見ての通りこのアプリケーションはあなたにかなり具体的な行動を示す。あなた自身の詳細な立場を説明すれば、それにしたがった解答をしてくれる。 万が一、アプリケーションが間違えたとしても、その旨を報告すればAIが学習し、間違いをなくすことができる。数年後には完全無欠のアプリケーションとなり、それは人類が完全無欠であることの証明になる。』 そうしてプレゼンテーションが終了し、半年後に新作アプリケーション【architect】がリリースされた。
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