【2】美化された世界

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友達がいれば、もっと変わっていただろうか。例えば、飲みながら朝まで喋り通すような、仕事の憂鬱も忘れる時間を過ごすことができたのだろうか。 考えたところで取り留めのないことなのだが、時々こうして思い出したように考えてしまう。悲しい習性だ。 最後の一口を飲み込んで、皿の上に箸を置く。 「ご馳走様でした」 ぱん、と音を出して手を合わせた後に、そう呟いて食器を片付け始めた。 それからは沸かしておいた風呂に入り、髪を簡単に乾かしてからベッドの上に腰を下ろした。 そのままぼーっとしていると、女の子からもらったクッキーをまだポケットに入れたままであることに気付いた。 ベッドから立ち上がり、ハンガーにかけてあるスラックスのポケットへ手を突っ込めば、指先がビニールの包装に触れる。 それを取り出してもう一度よく見ると、昔よく見たパッケージと随分デザインが変わっていた。 どうせだから今食べてしまうか、と考えて切り口を引き裂く。 中のクッキーは、砕けてボロボロになっていた。
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