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第1章 オレはその甘美な響きを知っている
ちょっとむくれて帰宅すると、リビングの方から暖かい香りが漂ってきた。
玄関でリードを外してもらい、もったいなくもお嬢に足を拭いてもらって、オレはリビングに駆け込んだ。
「おかえり!寒かったでしょう」
「異常はなかったかい?」
朝日が差し込む明るいリビング。おいしい匂い満載のテーブルに着いてオレを迎えてくれたのはママさんとパパさんだ。
「今日も周囲に敵は居なかったぞ!!」
いつも通りに報告して、パパさんの足下に近寄って、見上げると
「いい仔だ」
パパさんの手が降りてきて、オレの頭を撫でてくれる。お嬢やママさんよりも大きなこの手で撫でられるのがオレは結構好きだ。お嬢に撫でられると、腹の中がキュンキュンしまくって、最後には床に仰向けになって腹丸出しの格好になっちまうが、パパさんに撫でられると、なんだか懐かしい気持ちになる。ずいぶん昔、お袋に毛繕いされた感覚と似てるからかもな。
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