第1章 オレはその甘美な響きを知っている

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 お嬢が朝食を終えると、身支度を素早く済ませ、パパさんと一緒に家を出て行く。それがいつもの朝の光景。オレはこの瞬間が嫌いだ。  お嬢はコーコーという所に行っているらしいが、何をしてるんだが知らねぇが、帰りは遅くて心配だし、オレは寂しいしで、おちおち昼寝もできやしない。お嬢が家に居ない間、オレはお嬢のブランケットをこっそり持ち出し、そのブランケットを巻き付けながら玄関でお嬢の帰りをひたすら待ち続ける、という日々を過ごしている。  だが、今日はなんだかいつもと様子が違う。 「気をつけていってらっしゃい」  ママさんと見送るのは、パパさん一人。 「気をつけてね~!」  お嬢はというと、ママさんと一緒になって、パパさんに手を振っている。  何でだ?お嬢がコーコーに行かない日は、パパさんも出かけないのに、お嬢だけが家に残るのか?  見送っていた扉がパタンと閉まり、お嬢とママさんがリビングへと戻っていく。その後ろについて行き、そして、オレはハッとした。
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