第1章 オレはその甘美な響きを知っている

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 もしかして、お嬢、具合悪いのか!?  今までにも何回か、お嬢がコーコーに行かない日があった。そんなときは決まってお嬢の具合が悪い時だった。  オレはお嬢を見上げ、手に鼻先をくっつけた。 「なぁに?ウィル?くすぐったいよ」  お嬢の手をペロリと舐めると、お嬢はクスクスと笑った。  あれ?体調悪ぃんじゃねぇの??  オレが首を傾げると、それを見ていたお嬢とママさんが、ぷっと吹き出した。 「祥穂が高校に行かないのが不思議みたいね」  ママさんの言葉に、お嬢はオレの頭を撫で、しゃがんでオレを見る。 「ウィル~、私はね、今日から冬休みなんだよ。だから家に居ていい日なの」  お嬢の声にオレの耳がピクピク反応する。  ふゆやすみ!!!!  オレはその甘美な響きを知っている。お嬢が元気だけどコーコーに行かなくていい日のことだ!やったぜ!今日は一日お嬢と一緒だ! 「あれ、なんかウィルのテンション上がってない?」 「すごいわね、尻尾がちぎれそうだわ」  お嬢とママさんの視線がオレのふさふさの尻尾に注がれているが、そんなの気になんねぇ位に気分は上々、サイコーだ!
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