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「待ちやがれっ、ゴルァァァァッ!!」 般若が周囲を蹴散らしながら追い掛けてくる。 待てと言われて待つ素直な人種じゃないのよ、ゴメンあそばせ! なんて、余裕咬ましてる暇はない。 勢いよくペダルを漕ぎ回し、閑散とした古いアーケードの中をママチャリで突っ切る。 午前11時なのに軒先列ねた商店はろくに開いていもいないし、歩いているのは寝惚け眼な酔っ払いとお散歩してるじいさんかばあさん。 疎らだけどふらつき歩くおっさんを華麗に避けながら私はママチャリを走らせる。 「ユリアーっ!!待てや、コルァァァッ!!」 よく回る舌だこと。 細い路地裏の隅々まで行き慣れた街。 開いているのか空いているのか判らないシャッターの開きかけた店の隣を右へ折れ、風を靡かせて陽の当たる狭いアスファルトの上を走りながら、チラリと追い掛けて来ているであろう般若を振り返る。 ホントに一瞬──── 正面から目を逸らした瞬間──── 私は、飛んだ。
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