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悪い事をしてる。 誰に対して? 何に対して? 当然、"ヒロシ"に対して。 "ヒロシ"の"優しさ"に対して、私はすがっている。 「いつでも別れてあげる!」 そう視線を反らさず強く言い切ってみせた。 アキオは憤怒の顔面を剥き出してテーブルを殴りつけ、立ち上がった。 殴られる、訳ない事は判りきっているけれど、体がビクつきちょっとだけ怯んだ。 アキオの沸点を超した怒りの様を初めて目の当たりにする。 「ふざけんなっ!ぜってぇ別れてやんねぇよっ! どれだけ俺がガマンしてやってると思ってんだ、勝手してんじゃねぇ!」 「……っ?!ど、どっちが勝手なのよ?! アンタだって女遊びしまくってんじゃん! ガマンしてんのは私の方よ!」 「誰が遊んでんだよ!知りもしねぇクセに適当な事ぬかしてんじゃねぇよ! 俺はっ……!」 勢い任せに口論しあうのも初めて。 だけどアキオは急に口を閉じた。 「知らないよ!アンタが私に何話してくれてるのよ?! 周りが私を何て言ってるか知ってるクセに! ほったらかしてるクセに!」 興奮冷めぬ状態となった私の口は閉じる事なく、吐き出せずしまいこんでいた言葉が次々と音となって出ていく。
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