ため息のパパブルース

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ため息のパパブルース

   年が明けて、仕事始めの朝が来た。時刻はまだ午前5:00。  カーテンをそっとめくると、細かく張り付いた水滴で、窓が白くなっていた。それらをぞんざいに拭って、指先の向こうの寒さと暗さを感じた。  今日はコートが必要だな。  濃紺に墨を落とし混ぜたような世界を見るたびに、理由のない孤独を感じるのはいつもの事だ。  横で寝息を立てている妻を起こさないように、ベッドから薄暗い室内の中を移動し、石油ファンヒーターのスイッチを入れて、またベッドにもどる。  部屋が暖まるのを待つだけではなく、再びベッドを抜け出すまでに、心の準備をする。    久々のスーツはひんやりとしている。特にズボンを履くときは冷たく辛いが、身が引き締まる思いがした。    出勤前のルーティンは変わらない。髭を剃り、顔を洗い、寝癖を直し、ヘアースティックでサイドを抑える。仕上げに櫛を通して、サラリーマン仕様の私が出来上がる。  この時、鏡に映ったもう一人の自分に、話しかけるのは常となっていて、まだまだへこたれる訳には行かないぞと言い聞かせる。    私達夫婦の間には、まだ小さい二人の子供がいるし、これから塾だの学費だのとお金がかかる。加えてこの家のローン、子供が巣立ったら、今度は親の介護だ。その他にも、やるべき事は無限にある。
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