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破魔矢と御札を買い終えた頃に、妻の小雪が、私の所に合流してきた。
自分のバッグを肩から下げて、たこ焼きパックの入ったビニールを両手で持っている。
「あれ? カナとケンはどこ行ったの?」
ケンがカナを追いかけていって、5分程経っていた。
「実は……」
私は事の顛末を、簡単に説明した。すると、小雪の顔はみるみるうちに、不安と怒りを撹拌した表情に変わっていった。
「じゃあカナとケンは一緒なのね。私がここに合流する前に、おみくじの店の前を通ったけど、二人は見なかったわよ」
一抹の不安がよぎった。
それまで私の内心は、戻りが遅いケンとカナに対する苛立ちに支配されていたのに、そう言われて、そんなものは、たちまちどこかに霧散してしまった。
「今、そんな事を言われても分からない。ケンがすぐ追いかけて行ってしまったんだから」
内心を見透かされまいと、私は強い口調で切り抜けようとした。世間ではこれを逆ギレと言うのかもしれない。
しかし小雪は私の逆ギレなど、意にも返さず、子供の心配を大きな怒りに変えて、詰め寄ってきた。
「だからね。世の男はいい加減って言われるのよ」
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