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学校から15分程歩いた所に愛国病院はあった。
町の中心部に位置する、市内でも唯一の大学病院でもあるこの病院は、歴史も古く建物も古い。
黒ずんだコンクリートがより年季を感じさせ、下手したら廃墟のようにも見えなくもない。
小さい頃はお化け屋敷のように感じ、よく泣いて母を困らせていた。
「315号室の庵野聖(あんのひじり)さんのお見舞いに来たのですが」
「ここへお名前をお願いします。こちらの名札をスキャンしてから首から下げてください。病室の行き方は分かります?」
「大丈夫です、ありがとうございます」
有栖はそういうと手慣れた手つきで4番の名札をスキャンすると、首へと下げた。
そして受付を左へと抜け、これまた古びた赤黒いエレベーターの前へと歩を止める。
ちょうどエレベーターのランプが点灯し、扉が開くと足早に乗り込んだ。
スマーフォンにチラッと目をやると、時刻は17時を回っていた。
待ち受けには、母から仕事を終えて帰宅を告げるメッセージが表示されているのが目につく。
「やばっ…」
有栖は思わず開閉ボタンを連打した。
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