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母子家庭、一人っ子ということもあり、母はなかなかの過保護だ。
いつもの帰宅時間を過ぎれば、心配で電話がかかってくるし、出かけるときも行き先は必ず告げなければならない。
思わず溜息をついた。
手早くオッケーとスタンプに続いて、遅れますと告げるキャラクターがメッセージに続いた。
そして三階の到着を知らせるランプが灯る。
扉が開き、少し足早に病室を目指し歩を進める。
「…きゃっ!!」
角を曲がろうとすると同時ーー。
出会い頭に誰かとぶつかり、有栖は思わず尻餅をついた。
「いたたっ…あれ、司(つかさ)先輩…?」
走り去っていく横顔は久々に見た親友の兄、二つ年上の庵野司(あんのつかさ)だった。
そして、角から聞こえてきた会話で、何が起きたのか有栖は察した。
「…あなた、司にあんな事言うなんて…」
「…本当の事を言ったまでだ!あんな出来損ないより聖が大事なのはお前も同じだろう?優秀な聖よりも、高校受験を失敗してフラフラしてるような司が身代わりになれば良かったんだ!顔を見るだけでムカムカする…」
有栖は思わず立ち止まった。
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