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聖も詳しくは話さなかったが、司は高校受験に失敗してからは親と折り合いも悪くなったと聞いていた。
そして色々な事情で家を離れ、16歳で一人暮らしを始めたらしい。
聖が倒れてから久しぶりに会った司は、風貌も昔の優しいイメージからはかけ離れ、顔つきはただ険しい表情をしていた。
「どうしよう…」
気まずい雰囲気の中病室に入る勇気はなかった。
司の行く方向を振り返ると、バタンと非常口の扉が閉まったのが分かった。
「もしかして屋上かな…」
有栖は中学時代を思い出していた。
優等生でもあり少し不良だった司は、何か問題があるとよく屋上で考え事をするのが癖だった。
その時は、三者面談で言い合いになったらしく、飛び出して行った司を聖と探しに行った時の事だった。
屋上にいくと、大の字になっている先輩が、空を見上げてこう呟いた。
ーーお前達さ、楽しんでるか?
その表情、司先輩の悲しい顔を、はっきりと覚えている。
その出来事を思い返しながら、有栖は以前のように司を探しに屋上への扉へと足早に向かった。
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