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薄暗い階段を、寿命間もない蛍光灯が、チラチラと光を不規則に点滅させていた。
階段を上がり屋上への扉にたどり着くと、ドアノブに手をかける。
「…壊れてる」
ドアは軽く押しただけで開いた。
そして、隙間から吹き込む冷たい風が体を強張らせる。
「司先輩…」
有栖の声が風に掻き消された。
外へ出ると、空はあっという間に闇に覆われている。
強い風が吹く中、外灯もない屋上を見回す。
目が夜に慣れてないせいか、まるで闇に包まれているかのような錯覚さえ覚える。
「…せ、先輩?」
闇に目が慣れ始め、日が沈み微かに光り輝く地平線へ目を向けた先だった。
有栖は、屋上の端に佇む司の後ろ姿を視界に捉えた。
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