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「司先輩!!」
思わず駆け出していた。
しかし駆け寄る有栖に気付くような素振りも見せず、司はただ闇を見つめる。
「…から…へ行く…!!」
空へと叫ぶ司の声は、強い風に掻き消され所々聞き取れなかった。
そして重い足取りで一歩、足を出した。
「…聖、ごめんな」
呟くと更に一歩、足を踏み出す。
体がふわっと前へと傾いたーーと同時。
司は腕に走る強い衝撃に後ろを振り返った。
「…有栖!?」
そこには、腕を掴む悲しげな表情の有栖がいた。
「司先輩…」
司に引っ張られるように、有栖の足もふわりと地を離れる。
先程まで吹いていた風が止んだ気がした。
そして、屋上から落下する有栖の目には暗いコンクリートがゆっくりと近付いていた。
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