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2.死の兎 DeadRabbit
遠くから聞こえる、微かな波の音。
そして薄っすらと視界が開き、次は体に響く振動を感じると、今度は身体にまとわり付く、不快な血の匂いが鼻についた。
「…司先輩?」
痛みを感じ、頭へと手をやろうとすると、手首に窮屈な違和感を感じた。
次第にはっきりとしてきた目を向けると、両手首には黒ずんだ縄が枷となり、有栖の自由を奪っていた。
「何で…?ここは…」
まだ頭がぼんやりとしていた。
周囲は小さな木造りの小部屋で、小さい窓から微かな光が差している。
そして先程から感じる不規則な強い振動と、前方から聞こえる馬のいななきで、非現実的ながら、ここが馬車の中だと理解した。
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