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苦笑いしか出てこない。何てみっともないところを見られてしまったんだろう。すると、
「ん。」
「え?」
春馬がズボンのポケットから、ゴールドのキャラクターキーホルダーを取り出した。
「え?何?」
「やるよ。」
「でも…。」
「俺には、優梨奈がとってくれたこいつがあるからいいや。」
ニッと無邪気に笑って、レア物の入ったカプセルを見せつけてくる春馬を前に、鼻の奥がツンとした。
「お揃いだな。ちゃんとランドセルにつけろよ!」
「うん。」
「…やっと、優梨奈に追いついたな。」
私の頭に疑問符が浮く。
「何が?」
「いや、えっと、その…何て言うか。優梨奈、七月生まれだろ。半年間、同級生だけど、でも姉ちゃんって言うか…その。」
視線を横に流して、口をもごもごさせる春馬を初めて見た。これは冬のせい。
寒いから、震えて口が上手く動かないの。寒いから、私の頬に熱が帯びるの。
私はマフラーを外すと、春馬の首に巻きつけた。そして、どちらからともなく視線を重ね合わせる。
「お誕生日、おめでとう。」
fin
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