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「な?だから言っただろ?こればっかりは運なんだよ優梨奈。もう十分だろ?」
一回四百円のガチャガチャ。五千円分投入したが、お兄の言う通りゴールドは出なかった。思わず、本当に思わず、僅かに視界が揺れる。
「まだ!まだ五千円残ってるもん!」
「お前な~、何でこれにそんな執着するんだよ。」
「だって…九日は春馬(はるま)のお誕生日なんだもん。」
「あー…優梨奈の好きなあの生意気な餓「ちちち違うもん!好きとか!そんなんじゃないもん!ただ、お誕生日にプレゼントあげないとか、友達として?人として?どうなの!?って話なだけだもん!」
「はいはい。」
私が真っ赤な顔で思い切り否定すると、お兄はまた溜め息を零した。
図星である。私は、この戦隊アニメよりも魔法少女ピュアリーのほうが好きだし、本当ならそっちのガチャガチャを回したい。
けど、先月この台が出てからいつも春馬がぼやいていたのだ。何度回してもレア物のゴールドが出ないと。敵役のブラックばかり出て散々だと…。
現に、私の鞄の中からも何台ものブラックが顔を覗かせている。
「お兄!私、両替えしてくる!誰にもこの台譲っちゃ嫌だよ!」
「はいはい。………青春だねー。」
家が近所で、幼稚園の時から一緒の春馬。クラスだって、別れたことは一度もない。
小学一年生になってから入った、地元の子供サッカーチームの試合だって、応援に行かない日はない。
同じ時間を共有することが多いから。だから、ちょっとだけ他の女の子より、男の子より、仲が良いだけ。
別に、好きとかそう言うんじゃない。だけど…特別なんだ。だから、春馬が喜ぶ物をプレゼントしたい。ただそれだけ。
両替えしたお金をコートのポケットに詰めて、走り出す。次は出る、次は出る、そう信じて。
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