雪は桜の花びらに似ている。

4/5
前へ
/5ページ
次へ
そうして… 一月九日。始業式。 「じゃーん!」 「おー!春馬!ついに出たのか!?」 「すっげーゴールドだぁ。」 「俺、本物初めて見たよ。」 教室に入ると、春馬は机に腰を下ろして、鼻高々と両足をぶらぶらと揺らしていた。 「お!優梨奈~あけおめ。見ろよこれ、昨日やっと出たんだぜ!」 満面の笑みでこちらへやって来る春馬。けど、ランドセルに添えている私の両手は、ふるふると震えていた。 「お、おめでとう!あと、お誕生日も!おめでとう!」 「おう。サンキュー。」 「…でも、ごめん。プレゼント、家に忘れてきちゃった。明日持ってくるから。」 「え?別に気にしなくて…って、おい!優梨奈!」 矢庭に、私は廊下を走り出した。唇をキュッと噤んで辿り着いたのは、体育館裏。 「………。」 ゴソゴソと、コートのポケットから取り出したのは、春馬がずっと欲しがっていた戦隊アニメキャラクターキーホルダーのレア物のゴールド。 春馬が、自力で手に入れた物。 「…無駄になっちゃったな。」 不意に落ちてくる涙を両手で拭う。すると、 「はぁ、はぁ、…優梨奈、お前相変わらず足早ぇな。」 「春馬!?」 背後から突然声をかけられて、慌てて手にしていた物をコートのポケットに隠す…が、 「あ!何、隠したんだよ!見せろよ優梨奈!」 「いーやーだー!」 春馬はそれを見逃さず。そして抵抗も虚しく、あっという間にそれは春馬の目に映ることとなった。 「これ…。」 「…ごめん。誕生日、プレゼント…の、つもりだったんだけど。二つも要らないよね。」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加