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そうして…
一月九日。始業式。
「じゃーん!」
「おー!春馬!ついに出たのか!?」
「すっげーゴールドだぁ。」
「俺、本物初めて見たよ。」
教室に入ると、春馬は机に腰を下ろして、鼻高々と両足をぶらぶらと揺らしていた。
「お!優梨奈~あけおめ。見ろよこれ、昨日やっと出たんだぜ!」
満面の笑みでこちらへやって来る春馬。けど、ランドセルに添えている私の両手は、ふるふると震えていた。
「お、おめでとう!あと、お誕生日も!おめでとう!」
「おう。サンキュー。」
「…でも、ごめん。プレゼント、家に忘れてきちゃった。明日持ってくるから。」
「え?別に気にしなくて…って、おい!優梨奈!」
矢庭に、私は廊下を走り出した。唇をキュッと噤んで辿り着いたのは、体育館裏。
「………。」
ゴソゴソと、コートのポケットから取り出したのは、春馬がずっと欲しがっていた戦隊アニメキャラクターキーホルダーのレア物のゴールド。
春馬が、自力で手に入れた物。
「…無駄になっちゃったな。」
不意に落ちてくる涙を両手で拭う。すると、
「はぁ、はぁ、…優梨奈、お前相変わらず足早ぇな。」
「春馬!?」
背後から突然声をかけられて、慌てて手にしていた物をコートのポケットに隠す…が、
「あ!何、隠したんだよ!見せろよ優梨奈!」
「いーやーだー!」
春馬はそれを見逃さず。そして抵抗も虚しく、あっという間にそれは春馬の目に映ることとなった。
「これ…。」
「…ごめん。誕生日、プレゼント…の、つもりだったんだけど。二つも要らないよね。」
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