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「心配ないって。あそこのジジイなら」 ダイゴはそう言いながらも、明らかに苛立っていた。腕を組んで胸を張っているとき、彼に話しかけてはいけないというのは、僕ら仲間内では暗黙の了解で、今がまさにそれだった。このタイミングで下手なことを言うと、長い脚で回し蹴りを食らうことになる。 「なあ、紅白みた? 茅ヶ崎レイミやばかったな。かわいすぎ」 ドラゴンを倒して満足したケンジが呆けた様子で言った。 「かわいかった。たしかに」 ダイゴは少し気を緩めた様子で、同時に腕も緩む。 「なあ、レイミちゃんも、その、あれは」 「マンコ?」 「そう」 「ねーよ。あれはオーディナリー型だから」 ダイゴはこういうことに詳しい。「生きてる人間にしか興味ない」と口癖みたいに言うくせに、誰よりもアンドロイドの型に精通している。いわく、清純派女優の町田あゆみはセクサロイドで確定らしい。イーヴィオ社の最新型だそうだ。“そういうお店”では同型のセクサロイドと、あんなことやこんなことをするために大人たちが大金を払っているのだ、とダイゴは鼻を膨らませて力説していた。こんなことを掃除中に話しているから僕らはいつも立花先生に叱られる。 「あー、生体チップさえなけりゃなー」 右手の甲を恨めしそうに眺めながら、ケンジが腹を突き出し伸びをする。ケンジは腹だけは立派なおじさんだけれど、顔は小学生みたいだから、チップがなくたって“そういうお店”に行ったところで門前払いをされるに決まっている。神社の前でこんな邪な話をしている中学生を、神様はどんな気持ちで眺めているのだろう。作戦がうまくいくように、僕らはポケットから小銭を取り出して賽銭箱に投げた。形のあるお金なんて、今日日、賽銭くらいしか使い道がない。賽銭箱の中で僕らの35円が跳ねて、乾いた音がした。 「うまくいきますように!」 3人の声と柏手が狭い神社の敷地内に響く。ベンチで犬を連れたじいさんが、朗らかな笑顔で馬鹿なガキんちょ3人組を眺めていた。空が青い。
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