55人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「おやすみなさい。アンナ様」
ヒースはそう言って前脚で扉を閉めると、メイドに連れられ下の階におりた。
食事の間では王と王妃が待っていた。
「アンナ様はお昼はいらないそうです」
ヒースが声をかけると、二人は顔を見合わせた。
「じゃあ、お前はなぜここに?」
「姫様がヒース殿に食事をと」
ヒースを連れてきたメイドが答える。
かくして、王と王妃はヒースと食事をすることになったのだが、ヒースは物怖じせず王と王妃と会話をした。初めは違和感を抱いていた王と王妃も、ヒースの様子に慣れて、食事が終わる頃にはすっかり打ち解けていた。
「ヒースはなぜここに?」
「私は色々な地を旅していたのですが、アンナ様の評判を聞き、やって参りました」
「アンナはこの通り、自分以外に興味を示さない。どうかお前がアンナの心を開けるなら開いてくれ。望みのものを与えるから」
「私は望みのものなどございませんが、ベストを尽くさせていただきます」
「おお、頼んだよ」
最初のコメントを投稿しよう!