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アンナが目を覚ますとヒースが部屋の床に丸くなっていた。
アンナが体を起こす気配が分かったのか、ヒースは立ち上がり、彼女の方を向いてしっぽを振った。こうして見ているとただの不細工な犬だ。とても喋るとは思えない。
アンナは寝る前のことが夢なのか現実なのか分からなくなる。
そこへヒースが、
「アンナ様、おはようございます。ちょうどお茶の時間になりますが、お腹はすきましたか?」
と声をかけ、アンナは一気に目が覚めた。
手鏡を手に取り、覗くいて、寝癖がついた髪を整える。
「アンナ、やっぱりいつ見ても綺麗よ」
アンナは自分にうっとりと声をかける。
そして、ヒースのほうを向いた。
「お昼を食べなかったからお腹はすいてるわ。一緒にお茶にしましょう」
アンナが部屋を出て階段を下りると、ヒースもその後ろからついてきた。
テーブルには王と王妃がついていた。
「アンナ、お腹がすいたでしょう。今日はスコーンとクッキーがあるわ。紅茶が冷めないうちにお食べ」
王妃の言葉に頷くと、アンナは席についてスコーンを手にとった。ブルーベリーのジャムをたっぷりつける。
「あら、そうだわ。ヒースの分がないわね」
「私はアンナ様から少し頂ければ十分です」
ヒースの言葉に、アンナはスコーンを割って、ヒースの口元に置いた。
王と王妃はそんなアンナを見て驚いていた。アンナが自分以外のために気遣うなんて。
ヒースが口にブルーベリージャムをつけてるのを見て、アンナは笑う。
「不細工がさらに不細工よ。まるで紫の口紅をつけているみたい」
そして、笑いながらもアンナはナプキンでヒースの口元を拭いてやった。王と王妃はさらに驚いて顔を見合わせる。
「クッキーは上手にお食べよ」
アンナのくれたチョコチップクッキーをヒースは喜んで食べた。アンナはそれを見て満足し、ヒースを撫でた。そして手鏡を見る。
「犬を可愛がるアンナも素敵よ」
王と王妃はその言葉に少しがっかりしたが、アンナが嘘でヒースを可愛がっているようには見えず、希望を持ったのであった。
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