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アンナは空の色が段々と変わっているのを見た。
「向こうの方はもう暗くなってるのに、ここはピンク色。沈もうとしている夕日辺りは橙に輝いているわ」
アンナは目を大きく見開いて空を眺めた。
「城が高い所に建っているのでよく見えますね。見てください。日が沈もうとしているところが海です」
「海……。今は青くないわ。
地平線がなんだか丸みを帯びているわね」
アンナは眩しそうに目を細めながら、海と空の境を見た。
「そうです。私たちの住んでいる星は丸いからです」
「そうなの?!」
アンナは驚きとともに、世界の美しさを初めて感じた気がした。
夕日が沈んでいくと空も色を変えていく。最後は陽炎のように地平線を染めて、日は沈んだ。
「ヒース、私初めて日が沈むのを見たわ」
アンナは名残惜しそうに日が沈んだ先を見ながら言った。
「そうでしたか。美しいでしょう」
「そうね。なんだか胸が痛くなるような美しさだったわ。……私の美しさには敵わないけれど」
ヒースが笑ったように見えた。
「明日はでは日の出を見ましょう。日が昇るのもまた綺麗ですよ」
「沈むのとは違うの?」
「ええ。見れば分かります」
その日の夕食の時間。アンナが夕日について話したことに王妃と王妃は驚いた。アンナが手鏡を見ずに、自分たちの方を向いて話すなんて。王と王妃は心の中で小躍りしていた。そしてヒースに感謝した。
どうやらこの不細工な犬はアンナを変えてくれるらしい。
そのヒースはというとアンナが持って来させたローストビーフを美味しそうに食べていた。
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